大学基礎セミナーI(第2回)
オンラインでアクティブに学ぶ
馬本 勉
2020年5月12日 配信
2020年6月25日 更新
(↑クリック)
副学長の馬本 勉(うまもと つとむ)です。どうぞよろしくお願いします。ほとんどの皆さんとは,「はじめまして」の挨拶を交わしたいですし,この春に入学された方には「入学おめでとう」と直接言いたいのですが,それが今,叶わないことを残念に思います。近い将来,必ずやその日が訪れることを楽しみに,しばらくオンラインの学びを続けていきましょう。
まずは私の短い自己紹介をご覧ください。
●動画(1)(https://www.youtube.com/watch?v=yGp5emki_AI&feature=youtu.be ☚ クリック)
私の声を聞くことができます(顔も見ることができます)。
「大学基礎セミナーI」(第2回)の私の講義は,2020年5月12日(火)2限目のために配信されました(今,ご覧になっているサイトです)。このページを読み進めながら,リンク先をクリックして視聴し,これからの大学での学びについて考えていきましょう。
質問があれば,遠慮なく,メールを送ってください。
アドレスは,umamoto@ed.pu-hiroshima.ac.jp です。
【Special thanks】漫画研究者のロンさん画
本日,私がお話しするテーマは,「オンラインでアクティブに学ぶ」というものです。少しこの背景をお話ししましょう。
昨年の入学生に対し,私は次のような言葉を贈りました。
私から皆さんにお伝えしたいのは,ただ一言。
Be an Active Learner!
「アクティブ・ラーナーたれ!」ということです。どうか自ら学内外に学びの場を求め,主体的に学んでください。
具体的に何をするか。いくつもある選択肢の中から,2つだけ,おススメを紹介します。
まず,図書館へ足を運びましょう。図書館は果てしない宇宙のような存在です。大学での知的生活を広く,深くするヒントに溢れています。
2つ目は,キャンパス周辺や県内各所の自然,文化,歴史,芸術に触れる機会を持ちましょう。皆さんは学生証を提示することで,県内数多くの美術館や博物館を無料で観覧することができます。キャンパスメンバーズ制度といいますので,学内の案内をぜひチェックしてみてください。
そのほかにも,アクティブ・ラーナーへの道はいくつもあるでしょう。常に探し求めて欲しいと思います。
Be an Active Learner!
どうか一緒に,豊かな学びを続けていきましょう。
こんな風に,昨年度の入学生の皆さんにお話ししました。2019年4月のことです。そのときには,1年後の今の世界がこんな風になっているとは,想像もできませんでした。
今はまだ,残念ながら,図書館へ行きましょう,とか,地域へ出かけていきましょう,ということは言えませんが,やがてその日は必ず来ます。そのときを楽しみにしておいてほしいと思います。
“Be an Active Learner.” という言葉は,広島の自動車会社マツダが,“Be a driver.”(https://blog.mazda.com/archive/20140710_02.html) というキャッチフーズをCMで使っていることにヒントを得ました。
【ちょっと休憩】夕暮れの庄原キャンパス駐車場
“Be a driver!”
すこし英語の説明をしておきたいと思います。
Beで始まる命令文は,こうあってほしい,という願いを込めて使います。英語の授業で Be quiet. や,Be careful. という言葉を習ったことがあるかもしれません。明治時代に札幌農学校で教えたクラーク博士(William Smith Clark, 1826-1886)は,男子学生に向かって,Boys, be ambitious. と語ったそうです。「少年よ,大志を抱け」という言葉を聞いたことのある人は多いと思います。
Beの後には,quiet, careful, ambitious などの形容詞ばかりでなく,名詞が続くことがあります。上のように,a driver や,an active learner などがそうですね。「〜であってほしい」という思いを少し古風に「〜たれ」と言う場合があります。Be an active learner. は,「アクティブ・ラーナーたれ」という訳がぴったりのような気がしています。
県立広島大学では,2014年に文部科学省の大学教育再生加速プログラム(AP)テーマT「アクティブ・ラーニング」に選定され,アクティブ・ラーナーの育成を積極的に推し進めてきました。私たちは,「生涯にわたって学び続ける自律的な学修者」をアクティブ・ラーナーと呼んでいます。教室外でのフィールドワーク(行動型学修)や,教室内でグループワーク(参加型学修)など,多様な学修形態を通じて,アクティブ・ラーナーの育成を試みてきました。詳しくは,こちら(https://www.pu-hiroshima.ac.jp/p/umamoto/ap/ ☚ クリック)をご覧ください。
授業で展開される学びのかたちを変えていくことに加え,学修支援アドバイザー(Study Adviser: SA)と呼ばれる学生が他の学生の学びを助ける「学生による学修支援」が動きだし,これまでに多くの先輩たちがその役割を担ってきました。SA学生は,アクティブ・ラーナーのトップランナー的な存在として,本学の学びを牽引してくれています。
【ちょっと休憩】庄原キャンパスCALL教室でのアクティブ・ラーニング
昨年の入学式の日に,”Be
an Active Learner.” と語る少し前だったかと思いますが,私は偶然,ある動画に出会いました。それを少しご覧ください。英語で約6分間ですが,とても分かりやすく話されています。英文原稿も閲覧できますので,あとで読んでみましょう。
●動画(2)(https://www.youtube.com/watch?v=QXLsKl_ZRSY ☚ クリック)
"Be an Active Learner":2017 Matriculation Speech at Adelphi
University by Professor Lee Stemkoski.
※英文原稿を見る方法: スマホやタブレットの場合は,動画画面右下の,▽の形をした記号をクリックします。
パソコンの場合は,動画画面下に次の表示がありますので,「もっとみる」をクリックします。
"Be an Active Learner" - 2017
Matriculation Speech at Adelphi University by Lee Stemkoski.
(Full text below.)
もっとみる
アメリカの大学で,入学生に対して学びの心構えを語っている動画です。教室での社会性に言及された箇所もありますが,一人で学ぶ際のことがらも多く含まれています。(ときどき笑いが起こります。それはなぜか。ぜひ考えてみてください。)
【考えるヒント@】「どこ(どの箇所,どの言葉)が,笑えるのでしょうか?」
【考えるヒントA】「それ(その箇所,その言葉)で,あなたも笑えますか?」
「アクティブ・ラーナー」という言葉を聞くと,教室の内外で,活発に活動している姿が浮かぶかもしれません。もちろん,それは一つの姿ですし,私たちもそれを追求してきました。しかし,”Stay Home” が求められる今,“Stay Home”のまま,アクティブに学ぶ方法は考えられないでしょうか。
さきほど,アクティブ・ラーナーとは,「生涯にわたって学び続ける自律的な学修者」と書きました。そうなるためには,日々「自ら考える姿勢」が重要であり,それこそが「アクティブ・ラーナー」の本質と言えるのではないでしょうか。
オンラインでそれは可能なのでしょうか?
おそらく,その答はあなた方がすでに持っているか,あるいは,これから考案されることと思います。どうか自ら考え,それを私に教えてください。(今日のミニレポート課題です)
【ちょっと休憩】“The best way to learn is to teach.”
“If you want to master something, teach it.”
“By teaching you will learn.”
皆さんは,アクティブ・ラーナーのお手本となる何人もの人に,すでにお会いになっていることと思います。もっと会ってみたい,とお考えの皆さんには,TED: Ideas worth spreading(https://www.ted.com/)というウェブサイトがおススメです。TEDの動画を2つご紹介しましょう。
一つめは,植松 努(うえまつ つとむ)さんの講演「思いは招く」です(約20分,日本語です)。すでに見たことのある人,直接話を聞いたことのある人も多いと思います。植松さんのお名前が英語で Tsutomu Uematsu と表記されているのを見て,Tsutomu Umamoto
と似てるなあ,と思ったのが私の第一印象です(笑)。この動画,見たことのない人はぜひご覧になってください。すでに見たことのある人も,ぜひふたたび!
●動画(3)(https://www.youtube.com/watch?v=gBumdOWWMhY ☚ クリック)
植松
努「思うは招く」
植松さんの動画をご覧になった感想を,ぜひ聞かせてください。(メール待ってます)
彼のトーク,私は何度も見ていますが,ときに字幕を英語にして見ています。なるほど,こう訳すか,という発見があって面白いです。(私はネットで公開された様々な動画を見るたび,つい,英語の授業で使うことを考えてしまいます。皆さんも,自分なりの楽しみ方をぜひ見つけてみてください。)
この動画で植松さんは「どーせむり」という言葉を紹介されています。とても考えさせられます。
この言葉を聞くたびに,私は,同じように可能性を奪っているかもしれないある言葉を思い浮かべます。それは,「いみがない」という言葉です。かつて私は,あるところにこんな文章を寄せました。今よりずいぶん若い頃のことです。(2008年4月10日「意味の無い独案内」『英学徒の隠れ家日記』)
「意味が無い」という言葉を聞くと,悲しくなる。こんなことをしても意味が無い,と言う人がいる。その人は「意味が無い」というレッテルを貼ることで,「こんなこと」を拒絶し,否定する。ほんとうは,ただ「嫌いだ」と言いたいだけなのではないか。なら「キライ」って言えばいいのに。
意味はある。君が考えさえすれば。
意味は作るものだ。君のコンテクストの中で make sense するのさ。ふ。
make senseは「意味をなす」「道理にかなう」といった意味で,make sense of 〜は「〜の意味を理解する」という意味です。英語のこのフレーズから分かる通り,意味はどこかに,ある,とか,ない,というものではありません。作る(make)ものなのです。「意味が無い」という人は,自ら意味を作ろうとしない人なのかも知れません。どんなものにも意味を持たせることはできます。意味を作るのは,私たちひとりひとりなのですから。
【ちょっと休憩】植松さんの真似をして,私も幼いころの写真をアップしてみました。
もう一つ,別の動画をご紹介します。英語で14分ほどです。
●動画(4)(https://www.ted.com/talks/erin_mckean_the_joy_of_lexicography ☚ クリック)
Erin McKean, “The joy of lexicography,”
TED 2007
Erin McKeanさんは,言葉が好きで好きでたまらないlexicographer(辞書編纂者)です。Wordnik(https://www.wordnik.com/)というオンライン辞書を作成しています。この動画では,ことばと,辞書の可能性を,ユーモラスに語っています。Erinさんの語りもまた,私に多くの元気を与えてくれます。
TED: Ideas worth spreading(https://www.ted.com/)では,このほか実に多くの人が,短時間で印象深い語りを聞かせてくれます。日本語字幕や文字原稿も読めますので,ぜひ,あなたを元気づけるトークに出会ってほしいと思います。
【ちょっと休憩】私の研究室にも辞書がたくさんあります。
辞書以外にもたくさんあって,いつしかこんな風に…
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◇ ◇ ◇ ◇
ここで少し,オンラインで授業を受ける皆さんに,一般的な注意事項をお伝えしたいと思います。インターネットで情報を得ることと発信することは,とても便利な一方で,注意をしないとネット上の犯罪に巻き込まれてしまう可能性もあります。他の授業の中でも注意があるかと思いますが,私が(先週始まったオンライン授業の)受講生の皆さんに伝えている注意事項を列挙してみます。
(1) 自身のアカウントやパスワードを他者に伝えたり共有したりしないでください。
(2) 授業資料(動画・画像・音声・文書など)を,授業担当者の許可なく録画・録音・撮影・複製しないでください。また,それらを公開・配付しないでください。
(3) 他者が作成・投稿した提出物(動画・画像・音声・文書など)を,作成者の許可なく録画・録音・撮影・複製しないでください。また,それらを公開・配付しないでください。
(4) 以上の点を含め,個人情報,肖像権,著作権に対する意識を高め,配慮を怠らないでください。
(5) 他者を誹謗中傷したり,不快にさせたりする言動をとらないでください。
すでに皆さんは十分承知されていることと思いますが,折に触れて心に留めておきましょう。
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それでは,ここからは皆さん自身がネット上で豊かな出会いを求めていきましょう。図書館や美術館,コンサートなどに出かけることのできる日が来るまでの間,本や芸術にどうやって触れることができるか。少しだけ,私の楽しみ方をご紹介します。
まずは本ですが,ぜひ一度訪れてほしいサイトを集めたリンク集を一つご紹介します。リンク集は私が作りましたが,リンク先の充実したサイトは,それぞれ作成してくださった方々のおかげです。
https://www.pu-hiroshima.ac.jp/p/shobara/call/library.htm
Shobara
CALL, “Books and Libraries”
次に芸術です。いながらにして,多くの作品を鑑賞できます。
https://artsandculture.google.com/
Google Arts and Culture
【ちょっと休憩】広島市現代美術館前
ヘンリー・ムーア作「アーチ」
4年ほど前に訪ねたときの写真です
ネットで音楽を楽しんでいる皆さんも多いことと思います。今,話題になっているサイトを一つご紹介しましょう。
●動画(5)(https://www.youtube.com/watch?v=af1c_zEemvQ ☚ クリック)
Audizione
a Cremona "Gabriel's Oboe - Ennio Morricone” by Lena Yokoyama, PRO
CREMONA, 2020
私は,こうした動画に涙したり,活力を得たりする毎日を過ごしています。音楽の力は偉大だと感じます。
こうした本や芸術に触れるオンラインの旅を,授業の課題に取り組む合間に,ぜひ,続けていきましょう。
さて,そろそろ残り時間が少なくなってきました。最後に Be ambitious. の話に戻ります。この言葉を発したクラーク博士は,実際は,“Be ambitious like this old man.” と言った,という話も伝わっています。この老いぼれと同じように,というのは,私(=クラーク博士)のように,ということです。つまり彼は,年老いてもなお,ambitious であったということですね。
私(馬本)は今,55歳です。皆さんからは,ずいぶん「老いた」存在に思われるでしょう。ですが私は,年齢とは関係なく,常にアクティブに,生涯にわたって学び続けたいと思っています。アクティブな学びというのは,(グループワークやフィールドワークといった)教室や屋外での活動に限定されるものではない,ということは,すでに皆さんお気づきのことと思います。頭の中が,心の中が,どれだけアクティブか,ということが問われているのだと思います。
「青春」が,必ずしも身体の「若さ」ではなく,心の「若さ」を指すことに通じるかもしれません。
Samuel Ullman(1840-1924,アメリカの実業家)の有名な Youth という詩があります。その冒頭の言葉を紹介して,締め括りとします。
Youth
is not a time of life,
it
is a state of mind;
it
is a temper of the will,
a
quality of the imagination,
a
vigor of the emotions,
a
predominance of courage over timidity,
of
the appetite for adventure over love of ease.
この部分だけ,馬本の試訳を載せておきます。
青春とは,人生のある時期を指すのではない
それは,精神の状態であり
意志の持ち様である
それは,想像力の質を問い
感情の活力を求める
臆病ではなく勇気を持ち
安住より冒険を求める心だ
この詩について,詳しくは,「小さな資料室」資料170 サミュエル・ウルマンの詩「青春」をご覧ください。
今はまだ,教室外でのフィールドワークや,教室内でのグループワークはできませんが,そんな中でも,オンラインでどうアクティブに学ぶことができるか,この機にじっくり考えてみたいと思います。考えるヒントはこの詩の中にもありそうです。
◆ミニレポートの課題
「オンラインでアクティブに学ぶ:私の実践」
オンラインでアクティブに学ぶ方法について,すでに実践している方法,あるいは講義を聞いて思いついた方法について,
次の3点を述べてください。
1)具体的な方法の紹介
2)それによって得られるもの
3)これからの大学生活にどう活かしていくか
◆アンケートの回答もお願いします。
【参考までに…】最近気になった動画を紹介します。
〇「これは英語で何と言う?」という問いは,英語の学習に不可欠ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=-RttGL66KJo
牛田中チャンネル2 英語科「ばいらす」篇 牛田中学校
〇最近のお気に入り動画。元気が出ます。
https://www.youtube.com/watch?v=53B3ZrhfnOA
葉加瀬太郎さん
情熱大陸【OFFICIAL】